小さな花
『 パパ これあげる・・ 里利香 (りりか) からだよ 』
日曜の午後 トレーラーの中で寛いでいると リリカがそう言ってパパに花をくれた
それは咲いたばかりの桜花・・
どうやらそれを 近くの公園から 一つ摘んできたようだ
『 綺麗でしょ 』
ほっぺたを赤くして そういうリリカ・・ 少し息がきれている おそらくここまで走ってきたんだろう
彼女が生まれた頃からある その公園・・
まだ当時は 一人で歩けない ヨチヨチ歩きの赤ん坊だった
一緒に手を繋いだその先で、 スズメを見ては指差し 猫を見つけては指差し 目に入るもの全てをパパに教えてくれていた公園
《 あれから7年か・・ 》
明日は小学校の入学式だ
予定日より1ヶ月以上も早く 未熟児で生まれてきた彼女
急いで病院にかけつけると 自発呼吸が出来ず、 取り付けられた機械やチューブの中で 小さな体が揺さぶられ続けていた
当時は 先にある入園や小学校のことを想像するよりも、 今 こうして保育器に入っている彼女を助けてあげたい ・・
ただそれだけが 心からの願いだった
深夜 仕事を終え自宅に帰ると 彼女の小さな口に そっと耳を近付ける…
『 大丈夫 … ちゃんと息してる 』 そんな日々
《 パパ これあげる・・ 》
こんな俺を 喜ばせようと 走って手の中に包み持ってきた 小さな桜の花
出来るなら ・・ このまま変らずに ずっと手の中に . . . . .
ありがとう ・・ そして おめでとう!
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